配偶者から「1回だけの出来心だった」「継続的な関係ではない」と説明された場合、本当に慰謝料は請求できないのでしょうか。実務上、不倫の有無は回数だけで判断されるものではなく、1回の関係であっても婚姻関係を侵害したと評価され、慰謝料請求が認められるケースは少なくありません。この記事では、「1回だけの不倫」が法的にどのように扱われるのか、慰謝料請求が可能となる条件や判断基準、実際の裁判例を踏まえて分かりやすく解説します。
配偶者から「1回だけの出来心だった」「継続的な関係ではない」と説明された場合、本当に慰謝料は請求できないのでしょうか。実務上、不倫の有無は回数だけで判断されるものではなく、1回の関係であっても婚姻関係を侵害したと評価され、慰謝料請求が認められるケースは少なくありません。この記事では、「1回だけの不倫」が法的にどのように扱われるのか、慰謝料請求が可能となる条件や判断基準、実際の裁判例を踏まえて分かりやすく解説します。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。不倫の回数と慰謝料請求の関係は、個々の事情によって大きく異なります。実際のケースについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
配偶者の不倫が発覚したとき、相手から「1回だけだった」「酔っていて覚えていない」と言い訳されることがあります。
たった1回の過ちでも、慰謝料は請求できるのでしょうか。それとも、何度も繰り返していなければ、法律的には問題にならないのでしょうか。
この記事では、不倫の回数と慰謝料請求の関係について、法律的な考え方と実務上のポイントを解説していきます。
まず結論から言えば、法律上は「1回」でも不貞行為として認められる可能性があります。
不貞行為の定義
民法上の不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つことを指します。この定義には、「何回以上」という回数の制限はありません。
つまり、理論上は1回の肉体関係であっても、不貞行為に該当すると考えられています。
「継続性」は必須要件ではない
不倫というと、長期間にわたって継続的に関係を持っているイメージがあるかもしれません。
しかし、法律上は継続性が不貞行為の成立要件とはされていません。たとえ1回きりの関係であっても、配偶者以外の者と肉体関係を持った事実があれば、不貞行為として評価される可能性があります。
「偶然」「過失」は通用しない
「酔っていて断れなかった」「相手に押し切られた」「その場の雰囲気で」といった言い訳も、基本的には通用しないと考えられています。不貞行為の成立には「自由な意思」が必要ですが、これは「積極的に望んでいた」という意味ではありません。
強姦や準強制性交等の被害を受けた場合は別ですが、酒に酔っていた程度では「自由な意思がなかった」とは認められにくいでしょう。
1回でも不貞行為として認められるとしても、慰謝料の金額には影響するのでしょうか。

回数は重要な考慮要素
慰謝料の金額を決める際、不倫の回数は重要な考慮要素の一つとされています。1回きりの関係と、数年にわたって何十回も関係を持っていた場合では、精神的苦痛の程度が異なると評価されるのは当然でしょう。
一般的には、回数が多いほど、また期間が長いほど、慰謝料額は高くなる傾向があると言えます。
1回の不倫の慰謝料相場
明確な相場があるわけではありませんが、1回きりの不倫の場合、継続的な不倫に比べて慰謝料額は低めになる傾向があるようです。継続的な不倫で100万円〜300万円程度とされる中、1回きりの場合は数十万円〜100万円程度になることもあるようです。
ただし、これはあくまで目安であり、他の事情によって大きく変動する可能性があります。
「1回」の定義の問題
実務上、「1回」の定義が問題になることがあります。1日に複数回性的関係を持った場合、これは「1回」なのでしょうか。同じ相手と1週間の間に2回会って関係を持った場合は?
法律的に明確な定義があるわけではありませんが、一般的には「1度の機会」という意味で捉えられることが多いようです。
相手が「1回だけ」と主張しても、本当にそうなのか疑わしいケースは多くあります。
証拠との矛盾
LINEのやり取りを見ると、「また会いたい」「この前は楽しかった」「次はいつ?」といったメッセージが複数回やり取りされている。ホテルの領収書やクレジットカードの明細を見ると、複数回の記録がある。
このような証拠があるにもかかわらず、「1回だけ」と主張するのは矛盾しています。
相手の証言
不倫相手が「何度も会っていた」と証言しているのに、配偶者だけが「1回だけ」と主張する。このような場合、「1回だけ」という主張の信憑性は低いと評価される可能性があります。
状況証拠の積み重ね
直接的な証拠はなくても、状況証拠から「1回だけではないだろう」と推認されることもあります。長期間にわたって頻繁に二人で会っていた、泊まりがけの旅行に行っていた、互いの家を行き来していた、といった事実があれば、1回だけという主張は信じられにくいでしょう。
たとえ1回きりの関係であっても、以下のような事情がある場合、慰謝料額が高くなる可能性があります。
妊娠中や出産直後の不倫
妻が妊娠中、または出産直後という、最も配偶者の支えが必要な時期に不倫をした場合、悪質性が高いと評価される可能性があります。たとえ1回であっても、その時期、その状況での裏切りは、精神的苦痛が特に大きいと考えられるでしょう。
子どもへの影響
不倫の事実を子どもが知ってしまった、不倫相手を子どもに会わせていた、などの事情がある場合、子どもへの悪影響も考慮されて慰謝料が高くなることがあります。
不倫相手が特別な関係の人物
配偶者の親友、兄弟姉妹、上司や部下など、特別な関係にある人物との不倫は、裏切りの程度が大きいと評価されることがあります。たとえ1回であっても、その関係性の特殊性から、慰謝料が高くなる可能性があります。
計画的・悪質な不倫
「1回だけ」と言いながら、実は計画的に機会を作っていた、巧妙に証拠を隠滅していた、などの事情があれば、悪質性が高いと判断されるかもしれません。
配偶者への精神的影響が深刻
不倫の事実を知った配偶者がうつ病になった、PTSDを発症した、など、精神的なダメージが医学的に証明される場合、慰謝料が高額になることがあります。これは不倫の回数とは直接関係なく、結果として生じた損害の大きさが評価されるものです。
証拠の徹底的な収集
「1回だけ」という主張を崩すには、複数回の関係があったことを示す証拠が必要です。
LINEやメールのやり取り、写真、ホテルの領収書、クレジットカードの明細、GPS記録、目撃証言など、できる限り多くの証拠を集めましょう。探偵に依頼して、複数回の密会の証拠を掴むことも選択肢の一つです。
矛盾を突く
相手の話に矛盾があれば、それを指摘することが重要です。
「1回だけと言うが、この日とこの日にホテルに行った記録がある」
「1回だけなのに、なぜLINEで『何度会っても落ち着くね』とメッセージを送っているのか」
このように具体的に矛盾を示すことで、相手の主張の信憑性を崩すことができます。
「たとえ1回でも」という立場を明確に
交渉の場では、「たとえ1回であっても、不貞行為であることに変わりはない。慰謝料を請求する」という立場を明確にすることも一つの戦略です。回数の多寡で争うのではなく、不貞行為があった事実そのものに焦点を当てるのです。
ただし、実際の慰謝料額の交渉では、回数も考慮要素の一つになることは理解しておく必要があります。
専門家のアドバイスをもらう
「1回だけ」という主張が本当かどうかを見極め、適切に反論するには、法律的な知識と交渉のスキルが必要です。弁護士に相談し、証拠の評価や交渉戦略についてアドバイスを受けることをお勧めします。
逆に、自分が不倫をしてしまい、「1回だけだった」という事実を主張して減額交渉したい場合はどうすればよいでしょうか。

正直に認める
まず重要なのは、事実を正直に認めることです。「1回だけ」という主張が嘘だとバレれば、信用を失い、交渉は決裂します。本当に1回だけであれば、その事実を正直に伝え、証拠も含めて誠実に対応することが、結果的に減額に繋がる可能性があります。
他の減額要因を主張する
回数が少ないことだけでなく、他の減額要因も併せて主張することが効果的です。
すでに夫婦関係が冷えていた
相手から強く誘われた
深く反省している
経済的に余裕がない
このような事情を総合的に説明することで、慰謝料の減額を求めることができるでしょう。
現実的な金額を提示する
「1回だけだから慰謝料はゼロ」といった非現実的な主張は避けるべきです。1回であっても不貞行為は不貞行為であり、一定の慰謝料は発生すると考えるのが妥当です。相場を踏まえた現実的な金額を提示することで、交渉がまとまる可能性が高まります。
「1回だけの不倫」で慰謝料が取れるかという問いに対する答えは、「取れる可能性はあるが、金額は状況による」ということになります。
不倫の問題は、回数だけで判断できるものではありません。不倫の背景、夫婦関係の状況、精神的苦痛の程度、反省の態度など、様々な要素が絡み合って、最終的な結論が導かれます。
もし「1回だけの不倫」について悩んでいるなら、自己判断せず、弁護士に相談することをお勧めします。
自分のケースでは、どの程度の慰謝料が妥当なのか、どのように交渉を進めるべきか、専門家の意見を聞くことで、より良い解決策が見つかるはずです。